「最期の楽園」は2002年2月6日に第1刷が発行された。
星野道夫さんの未発表の写真と心に響く言葉の数々で構成されている。
「長い旅の途上」「ノーザンライツ」「旅をする木」「Alaska 風のような物語」「イニュニック[生命]」「GOMBE」「森と氷河と鯨」の中から、印象的な言葉が抜き出されている。抜き書きされたいくつかの言葉は、星野道夫さんの文章の中で気に入った言葉を自分でノートに書き写しているが、その文章と重なるものもある。星野さんの文章を読んでいると色んなことを考える。
この本も扉の言葉でまず捕まってしまった。
「想い続けた夢がかなう日の朝は、
どうして心がシーンと静まりかえるのだろう。」
「長い旅の途上」の中の一節。
夢を思い続けるということに向けていたエネルギーをもう使わなくてもよい、わくわく、どきどきでもない、正座して真摯に夢に対する日。背筋を伸ばしてしっかり歩き、しっかり見て心に焼き付ける。夢はかなった瞬間から思い出に変わってしまうのだろうか?あるいは夢のまま持続するのだろうか、それともまた新たな夢を想うのだろうか?
星野さんはアラスカの過去を振り返りながら、そこには留まらずいつも前を向いて歩いていた人だから、きっとまた次の夢を思うのだろうな・・・。
たった二行の文章から想いはどんどん広がって行く。星野さんの文章から色んな想像が広がってゆく。
ブナの新緑に囲まれたさわやかな季節。
山道を歩く。あたりを歩いている人は人っ子一人いない。
二輪草が山エンゴサクが道ばたに咲いている。
思いとは何なのだろうか・・・。刻々と思っては消えてゆくものたち。
どこから来て、どこへ行ってしまうのだろうか・・・。
2002.9.16